金庫株の活用による納税資金対策について、説明してください。

 

Q,相続が小売業を営んでいた父に生じることになり、継者である私が、父が保有していた株式を後相続することとなった。
しかし、株価が高額になっており、さらに相続税額も高額となってしまったため、相続税を納税することが不可能となってしまった。
そこで、金庫株の特例を活用し、相続取得した株式を会社に買い取ってもらおうと考えていたが、会社に肝心の買取り資金がなかった。

<失敗のポイント>
相続により取得した株式を、その発行会社に買い取ってもらった場合においては、一定の要件を満たすことにより、みなし配当課税(配当控除後の最高税率約44%)はなく、譲渡所得として課税(20%)とされる。これを「金庫株の特例」という。
しかし、会社に買取り資金がない場合においては、自社株を会社に買い取ってもらうことは不可能となる。

<正しい対応>
金庫株の特例を適用することを考えているのであれば、あらかじめ会社に買取り資金を用意しておかなければならない。
そのためには、会社で高い解約返戻金を受け取ることが可能である保険を活用して資金を準備したり、会社所有の未利用地を譲渡することにより買取り資金を準備する必要がある。
また、相続開始後3年10ヶ月以内の譲渡であれば、その譲渡した相続人は金庫株の特例のみでなく、相続税の取得費加算の特例を適用することが可能となる。

<税法等の解説>
(1) 自己株式買取の手続き
相続により取得した非上場株式を会社へ譲渡する場合において、その会社が行う会社法上の手続きは以下のようになる。
一、 取締役会において、次の事項を決めなければならない。
・ 交付する金銭等の内容と総額。
・ 株式を取得することができる期間。
・ 譲渡人となる株主。
・ 取得する株式数。

二、 株主総会(臨時でも可)の特別決議(総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かる、その議決権の3分の2以上の賛成)をしなければならない。

(2) 金庫株の活用
2001年の商法改正によって、会社は自己株式を自由に取得・保有することが可能となった。この自己株式の保有及び取得の自由化を金庫株と呼びます。

(3) みなし配当の不適用
通常、株式をその発行会社に譲渡した場合においては、資本金等の金額を超える部分の対価については、「みなし配当」として、配当金としての課税が行われることになる。しかし、以下の要件を満たす者が、相続により取得した自社株を発行会社へ譲渡した場合に関しては、みなし配当の規定は適用されることはなく、全額が譲渡所得として課税されることになる。
一、 相続税の申告紀元後3年以内に譲渡すること。
二、 相続あるいは遺贈により、財産を取得し、納付する相続税があること。

【具体例】
金庫株の特例を適用した場合の、私の所得税・住民税の金額はいくらになるのか?
〔前提〕
譲渡益:30万円
みなし配当:20万円
給与所得:2000万円
※ 簡便化のため上記以外の所得及び所得控除等は考慮していない。

〔分離課税〕
(みなし配当20万円+譲渡益30万円)×20%=10万円
〔納税額合計〕
720.4万円+10万円=730.4万円
〔総合課税〕
給与所得2000万円×50%-279.6万円=720.4万円

通常、みなし配当20万円は、総合課税の対象となるため、この方の場合においては、給与所得2000万円と合算され、最高税率により、所得税・住民税が計算されることになる。
しかし、金庫株の特例により、株式等の譲渡所得として課税され、20%の税率により課税されることとなた。したがって。この方のように所得が高く、結果として税率が高くなる方は、譲渡所得として課税された方が、税務上、この金庫株の特例を適用し有利になる。
また、この株式を相続する際に、払った相続税があり、かつ相続税の申告期限から3年以内の譲渡である場合においては、相続税の取得費加算の特例が適用されることになり、譲渡所得が圧縮され、譲渡に係る所得税・住民税を軽減することが可能となる。

(4) 相続税の取得費加算の特例
相続財産を相続税の申告紀元後3年以内に譲渡した場合には、譲渡所得の計算上控除する取得費に、譲渡した資産に対応する相続税額が加算され、譲渡所得税の負担を軽減することが可能となる。

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